CityScape

自作の小説とか雑文とか

六月のグレゴール

六月のグレゴール (5)

それからというもの、グレゴールの頭の中はあの男を捕まえることでいっぱいだった。撮影の時も、休憩中も、どうやって奴を捕まえようかと彼は考えていた。その末に、彼はとっておきの作戦に出ることにした。 --- 夜。グレゴールは部屋の中で一人、夜風に当た…

六月のグレゴール (4)

数時間後。 「わたし、男の人の部屋に招かれるのは初めてです」 アンは恥ずかしそうに顔を赤らめながらグレゴールの部屋に入った。 「ふふ、緊張しなくてもいいんだよ」 彼は、窓の外に誰もいないことを確認した後、カーテンを閉めた。オレンジ色の間接照明…

六月のグレゴール (3)

結局その日の夜は眠れなかった。次の日グレゴールは寝不足のままで現場に出た。 「……」 そんな彼の顔を、ジョーは心配そうに覗き込む。 「なんか顔色が悪いけど大丈夫か?」 「実は……」 グレゴールは、彼に正直に昨日の出来事を話した。しかし、ジョーの返答…

六月のグレゴール (2)

グレゴールが現場入りしてから一時間後。 「ふふふ、あなたって面白いこと言うのね」 「え?」 驚く演技をするジェフの目の前で、青いドレスを着た若い女性が笑っている。彼女は、今回彼の相手役を勤めるアン・フロイドだ。グレゴールは、スタッフに混じって…

六月のグレゴール (1)

その夜の月は、やけに赤かった。それが輝く夜空の下を一人の男が、ほろ酔い気分で歩いていた。彼の名前はグレゴール・パーカー。今のハリウッドをときめく人気俳優だ。大学生の頃にこの業界に入ったグレゴールは、演劇サークルで培った演技力と持ち前の端正…