CityScape

自作の小説とか雑文とか

小説

お知らせ

先日から始まった「迷光仕掛けのゴースト」ですが、やっぱりどこかのコンクールに出そうかなと思い、掲載を取りやめることにしました。ご了承のほどよろしくお願いします。

あわてんぼうのサンタクロース-少し早い奇跡の夜-

ある星が綺麗な冬の日の夜のことです。みんなが寝静まった頃、シャンシャンと鈴を忙しなく鳴らしながら夜空を駆けるものがいました。「ほれ、いっそげいっそげ!」 トナカイたちががひくそりに、白い髭に赤い服。その人の名は、みなさんご存知サンタクロース…

遠く離れていても

時は二〇五一年。ぼくはなぜか、日付さえ超えた遠い場所にいた。新天地での農作物の栽培に関する研究のためだ。日本とは勝手の違うここでの生活でのたったひとつの楽しみは、家族との会話だった。 夜八時。職員一人一人に割り当てられたコテージに帰ってきた…

マウンティング面接

ここは都内のどこかにあるとある会社。そこの一角で、集団面接が行われていた。 部屋の中には、三人の就活生が二人の面接官と向き合っていた。その中で灰色のスーツを着た若い男の面接官が口を開く。「それでは、左の方から自己紹介お願いします」「F川大学…

名前の長い寿司

ここは大手回転寿司チェーン「特盛寿司」の本社にある商品開発室。ここでは新メニューの開発が日夜行われていた。 「さて、みんな」 会議室の中で、そう言ったのは商品開発部 開発三課の中島だった。「そろそろここで、こいつに名前をつけようと思う」 そう…

いじめ撲滅デバイス

ある日の朝。「あれ、ない」 ここはとある中学校。ここの三年生である五木茂は鞄の中を見て焦っていた。「どうしたの?」 隣の席のクラスメイトがそう彼に聞くと、彼は、泣きそうな声でこう言った。「数学の教科書がないんだ」「家に置いてきたんじゃない」…

私の彼氏はヴァンパイア

ある日曜日。わたしは彼氏とデートしていた。「今日は何食べたい?」 黒い日傘をさした彼は、私の考えている事を先読みして行動してくれる素晴らしい人だ。ただ一つ、ある点を除いては。「えーとね、二郎系ラーメン!」 私がそう言うと、彼は急に苦虫を潰し…

優しい世界

思えば、褒められたことのない人生だった。 東京から少し離れた片田舎の農家に生まれたおれは、幼いころから要領が悪いのか、家族に否定されながら育った。 「お前はなんもできないな」 父からはいつも不満げにそう言われ、 「まったく、お前は役立たずだね…

今週のショートショート #18「ハイ•ウォーカー」

二〇二九年 八月 アメリカ・マサチューセッツ工科大学 運動場 その日はスッキリと晴れた天気だった。青空の下、運動場のトラックを囲むようにたくさんの企業関係者や新聞記者が集まっていた。彼らは、ここの卒業生が中心になって開発された新型二足歩行ロボ…

今週のショートショート #17「雨の日に」

ここはアメリカ某所にある鄙びた住宅街。その日は雨が降っていた。そんな中を、宅配会社のロゴがついた白いバンが走っていた。立ち並ぶ家々の間の道を走っていたそれは、道の端っこあたりにある小さなアパートの前に止まると、後ろの扉を開けた。そうすると…

今週のショートショート #16「アイアンマン」

二〇三〇年 八月 その日のロサンゼルスの天気は、晴れだった。この日のおれ−ハロルド・フカガワ−は、相棒のリタ・ジョーンズと空港にいた。旅行ではない。これは仕事なのだ。 今から一ヶ月前。メリーランド州にあるボルチモア・ワシントン空港で妙なものが現…

今日のショートショート #15「ロボットオペレーターの逆襲」

時は近未来。工場や倉庫の仕分けなどのいわゆる誰にもできる仕事は、人間からロボットにとってかわられていた。しかし、人間は仕事を実際にしない代わりに遠くから遠隔操作でロボットを手助けする仕事をマニュアル化し、誰でもできる仕事にした。 「うぇぇ、…

今日のショートショート #14「UNオーエン」

二〇XX年、夏。数多のゲーマーが集うオンラインFPSゲーム"フォース•オンライン"に、それは現れた。月に一回行われるバトルトーナメント。そこで数々の有名プレイヤーを抑え、見事一位に輝いたのは無名のプレイヤーだった。その名前は"UNオーエン"。彗星のご…

今日のショートショート #13 「丸森さん」

これは、おれが高校生の頃の話だ。 その時いわゆるチャラ男だったおれは、つまらない学校生活の合間に、同じクラスの丸森さんをいじって楽しんでいた。彼女はいわゆる緊張しいな性格で、いきなり話しかけると、必ずどもるのだ。その様子が可愛くて、おれはい…

今日のショートショート #12 「別荘へようこそ」

ある日曜日。ある一人の男が友人の別荘に招かれた。 「へぇ、すごいな」 男は、目の前に現れた光景を見て、ため息を漏らした。彼の視線の先には、神殿のような壮麗な空間が広がっていた。 「いいだろ」 そう鼻の穴を膨らませる友人と共に玄関をくぐると、貴…

今日のショートショート #11 「スキー場のヒーロー」

二〇XX年 十二月某日 その日は、スッキリと晴れた空が広がっていた。ここは日本のどこかにあるスキー場。 そこではたくさんの人々がスキーを楽しんでいた。澄み渡る空の下で躍動するたくさんの笑顔たち。それらをスキー場を望める崖の上で、見つめる者がいた…

今日のショートショート #10 「猫耳」

おれは、都内の会社で普通のサラリーマンをしている。特におかしな趣味はないし、何もかもが平均的な男だと思っている。岩のようにいかつい顔以外は。 なんかお前はもう死んでいるとか言いそうな顔だよな。これは入社してすぐに言われた言葉だ。ゴツゴツとし…

今日のショートショート #9 「タイムカプセル」

時は今から遠い遠い未来。二十一世紀末に起きた度重なる核戦争で、今まで築き上げてきた文明は崩壊し、さらに人類も消えてしまった。残ったのは廃墟と化した建造物と、機械だけだった。 ここはどこかにある海岸。それを眼下に望む崖の上に灯台が一つポツンと…

今日のショートショート #8「代理登校-理科ちゃん2-」

青山晴彦は小学校教師だ。この道十年の彼は、持ち前の明るさと熱血さでたくさんの児童を育て上げた。その経験から、彼はどんな問題のある子供でも自分の手にかかれば更生できると自負していた。しかし、教師生活十年を迎えた今、ある児童に悩まされていた。 …

今日のショートショート #7「予知夢」

時は近未来。この時代の精神病治療は、脳波をコントロールできる機械の出現で、目まぐるしく変わりつつあった。 ここはアメリカ北部にあるウェルズ記念病院。この病院では脳波管理ソフトを使った睡眠障害の治療が行われていた。そんな中、一人の患者がこう言…

今日のショートショート #6 「VR親フラ」

ここは、どこかの戦場。深い森の中で、兵士たちが三、四人ほど行軍している。ぼくは、茂みの中で、攻撃のチャンスを伺っていた。 「こちらワン、ターゲットを発見した」 息をひそめながら、ぼくは無線で仲間に連絡する。 「OK」 「今から攻撃を開始する」 ぼ…

今日のショートショート #5「宇宙保安庁」

時は二〇九五年。人類が宇宙に進出して七十年ほどが経ったこの時代。世界各国は、宇宙を地球における領土や領海と同じように区分けし、常に侵しているものはいないか、常に目を光らせていた。 ここは日本の領宙内。幾千もの星々が輝く中を、日本の宇宙保安庁…

今日のショートショート #4「ストーカー」

ある日のこと。学校帰りの小島綾は、背中に何か絡み付くような視線を感じていた。 それはどこかねっとりとして、どちらかと言えば不快感を伴うものだった。 まさか、ストーカー? そう思った綾は、あわてて振り向く。しかし、彼女の後ろには誰もいなかった。…

今日のショートショート #3「囚人」

その日は、見惚れてしまうほどに青い空だった。 ここは、とある街にある刑務所。建物をぐるりと囲む大きな壁の前に、一人の囚人が立ち尽くしている。 彼は、ぼーっと空を眺めていた。まるで塀の向こうの世界を求めるかのように。 囚人は、視線を空に向けたま…

今日のショートショート #2「おじいちゃんはガラスの中」

ぼくの祖父が亡くなったのは、今から半年前のことだった。優しくて、誰からも愛された祖父。誰もがその死を悲しんだ。その中でも一番悲しみに暮れたのが、その妻である祖母だった。彼女は、あの日からずっと時間が止まったままだった。 「孝雄さん……」 祖母…

今日のショートショート #1 「扉の向こうに」

ここは山間にある小さなバス停。月の綺麗なある夜、この日最後のバスが今に出発しようとしていた。 バスが乾いたエンジン音を獣の唸り声のごとくふかしていると、静寂を切り裂くように叫び声がした。 「ちょっ、待ってよ」 そう言って走ってきたのは卵色のワ…

六月のグレゴール (5)

それからというもの、グレゴールの頭の中はあの男を捕まえることでいっぱいだった。撮影の時も、休憩中も、どうやって奴を捕まえようかと彼は考えていた。その末に、彼はとっておきの作戦に出ることにした。 --- 夜。グレゴールは部屋の中で一人、夜風に当た…

六月のグレゴール (4)

数時間後。 「わたし、男の人の部屋に招かれるのは初めてです」 アンは恥ずかしそうに顔を赤らめながらグレゴールの部屋に入った。 「ふふ、緊張しなくてもいいんだよ」 彼は、窓の外に誰もいないことを確認した後、カーテンを閉めた。オレンジ色の間接照明…

六月のグレゴール (3)

結局その日の夜は眠れなかった。次の日グレゴールは寝不足のままで現場に出た。 「……」 そんな彼の顔を、ジョーは心配そうに覗き込む。 「なんか顔色が悪いけど大丈夫か?」 「実は……」 グレゴールは、彼に正直に昨日の出来事を話した。しかし、ジョーの返答…

六月のグレゴール (2)

グレゴールが現場入りしてから一時間後。 「ふふふ、あなたって面白いこと言うのね」 「え?」 驚く演技をするジェフの目の前で、青いドレスを着た若い女性が笑っている。彼女は、今回彼の相手役を勤めるアン・フロイドだ。グレゴールは、スタッフに混じって…