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S線上のワルツ-未来の戦争 Ⅱ-

 時は近未来。アメリカの米軍基地にて、AIが操縦する無人戦闘機と、人が操縦するそれまでの戦闘機の模擬戦が行われようとしていた。マックス・スティーブン准士官率いる開発チームは、自分たちが手塩にかけたAIが勝利すると信じていた。過去の戦闘や模擬戦のデータから学んだ様々な戦術パターン。それが彼らの自信の源だった。その一方で、人間側の方も気合が入っていた。空軍の上層部は、AIに挑む猛者を内部から募った。その結果、一人のパイロットが名乗り出た。彼の名前は、ジョニー・グラース。この道十年のベテランパイロットである彼は、スティーブン准士官とは同期で、闘争心が強いグラースは、何かと彼を目の敵にしており、今回もあいつに負けたくないと自ら参加を申し出た。そんなこんなで、人間対機械の世紀の戦いは静かに始まろうとしていた。


 キャノピーの中で、グラースは、ニヤリと笑った。白く光る雲海の中に、今回の相手である無人戦闘機の姿を見つけたからだ。

「よーし、来た来た」

 彼はゆっくりと照準を相手の方へ定める。そして挨拶代わりにぶちかます。それを見たAIは少し旋回したあと、お返しとばかりに撃ち返す。しかし、グラースはそれを華麗に避ける。だが、AIの方も負けなかった。そいつは彼の上をくるりと旋回した後、また撃ってきた。グラースはさらに避ける。しかし、また相手は追ってきた。その後も避けてはまた追いかけ、避けてはまた追いかけの繰り返しが続いた。

「くそっ」

 あいつ、おれのパターンを読んでやがる。グラースは唇を噛みしめた。彼はなんとか相手の目が届かないあたりまで機体を動かした後、そのままの状態で、攻撃のチャンスをうかがった。だが、AIはグラースの動きを見逃さなかった。そいつは彼を見つけるや否や、また集中砲火を浴びせてきた。

「全くしつこいやつだな」

 グラースは、口ではそう言いながらも、目でAIの行動パターンを読んだ。たとえ、高性能であろうと、所詮はただの機械。だから、基本的な戦術パターンしかインプットされてないはずだ。そう思ったからだ。彼は、思い切って相手の上まで浮上した。そうすると、AI戦闘機は、機首をまるで見上げるのように伸ばしたまま止まった。やっぱりな。グラースは口角をゆっくりとあげた。こいつ基本に則ったことしかしないから、こういうトリッキーなことには弱いのだ。

「じゃ、次はこっちから行くぜ」

 彼は余裕たっぷりにそう言うと、相手の真上から攻撃した。上がることを予測してなかったAIは、先程までの様子が嘘であったかのように一気に劣勢に立たされた。よっしゃ、これで勝ったな。グラースがそう思ったその時、相手はこちらも予想もしなかった行動を取った。

「うわあああああっ!?」

 なんと、彼と同じ位置までに浮上してきたのだ。そしてそいつは、翼を執拗に攻撃してきた。

「ほう、面白えじゃねえか」

 グラースは、なぜかテンションが上がっていた。お前がその気なら、こっちも本気でやらせてもらう。彼は、相手の裏まで回ると、後ろから攻撃した。すると、AIはゆっくりと機体をこちらに向けた。その瞬間を狙ってさらに撃つ。混乱したそいつはぐるぐると回った後、グラースの攻撃によって片方の翼を失い、そのまま落ちていった。

「楽しかったぜ」

 落ちゆく相手に、グラースはぽつりとそう言った。


「……」

 暗くて狭い空間の中で、グラースはポキポキと首を動かした。彼は思いっきり伸びをした後、VRグラスをそっとはずして外へ出た。実を言うと、先ほどまでの戦いは、全てシュミレーターの中での出来事だったのだ。出てきたグラースに、スティーブン准士官は拍手をしながらこう言ってきた。

「いやあ、まさかAIと互角に戦えるなんて、興味深い戦いだったよ」

「あんたにだけは褒められたくねえよ」

 彼はそう鼻を鳴らした。

(終)