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恋人bot

時は二〇二X年。コロナ禍の影響で、リモートワークが一般化した時代。ある小さなアパートの一室で一人の青年がこたつの中でゴロゴロしていた。彼は長い間自宅で仕事をしていたために寂しさを感じていた。こんな時にやることといえば、床に寝転がりながら甘美な妄想にひたることだった。

「あーあ、なんかかわいい女の子とかが励ましのメッセージとかくれないかな」

そんなことを考えながらひたすらゴロゴロしていると、あることが閃いた。

「そうだ、特定の言葉だけに反応するbotを作ろう」

青年は弾かれたように立ち上がった。


パソコンに張り付いて数分後。

「よーし、完成」

彼は恋人botを完成させた。疲れたとか仕事したくないなとかの特定の言葉に対して、頑張ったねとかお疲れ様とか返してくれる優れものだ。パソコン上で実際に動かしているうちに彼は、あまりの完成度にまたもやあることを思いついた。

「……」

青年はニヤリと笑うと、そのまま行動に移した。


次の日。青年の勤め先の社内チャットに女神が現れた。

「みなさん、今日はお疲れ様」

彼が作った件のbotだ。彼女の優しさに、男性社員たちはすぐにメロメロになった。しめしめ。みんな見事に騙されたな。青年はニヤニヤしながら画面を眺めていた。だが、そうしてられるのも時間の問題だった。


Botが降臨してから数日後。社内チャットにこんな意見が現れ始めた。

「ねえ、なんかさ、この子ボキャブラリーなくない?」

「ああ、そういえば」

最初はほんの一部しか抱かなかった違和感は瞬く間に広がり、ついには全体に広まってしまった。これはまずいぞ。そう思った彼は、急いでこう書き込んだ。

「その子、おれが作ったbotです」

すると、次々とコメントが書き込まれた。

「すごいな、俺にも作ってよ」

「俺も俺も!」

青年は思わぬ反響に驚きながらも安心した。