CityScape

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女王様bot

恋人botが広まってから一ヶ月。青年は、同僚にチャット上でこんな依頼を受けた。

「あのさ、みんなのやる気を高めるbotって作れないかな」

「はあ?」

botだけで人のやる気を操作できるやつがあるか。青年は心の中でそう突っ込んだ。

「最近リモートワークに慣れちゃったせいか、みんな仕事せずにチャットで無駄話ばっかしてるんだよ」

「ふむ」

「で、君にみんなのお尻を叩くbotを作って欲しいんだ」

みんなの尻を叩いてやる気を促すbotか。そんなのできるかなあ。青年は一分ほど逡巡した。そしてその末にこう言った。

「わかった、やってみるよ」


数分後。青年は試作品を完成させた。

「できたよ」

「おお、見せて見せて」

彼はチャット上で試しに動かして見る。まずは眠いとかお腹すいたと打ち込む。そうすると、こんなメッセージが表示された。

「みんな、今は仕事中だよ。早く戻って」

「うーん」 同僚は唸った。

「なんかイマイチだな」

「どこがだよ」

青年は自身があっただけに少し喧嘩腰になった。そんな彼を尻目に、同僚はこう言った。

「そうだね……もうちょっと女王様感が」

ドMかよ。彼は驚きを通り越して呆れてしまった。


数日後。同僚のチャットに罵声(正確にはそれのようなものだ)が響いた。

「このクズが!真面目に仕事しないと殺すわよ」

例のbotが完成したのだ。

「は、はい!」

「女王さまのためならなんでもしますー」

効果は抜群だ。

「いやあ、ありがとう。おかげでみんな真面目になったよ」 そうニコニコ顔でお礼を言う同僚に、青年はこう聞いた。

「なあ、ひとつ聞いていいか?」

「何?」

「これってお前の趣味だろ」

すると、同僚はこう答えた。

「うん、そうだよ」