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今日のショートショート #3「囚人」

その日は、見惚れてしまうほどに青い空だった。 ここは、とある街にある刑務所。建物をぐるりと囲む大きな壁の前に、一人の囚人が立ち尽くしている。 彼は、ぼーっと空を眺めていた。まるで塀の向こうの世界を求めるかのように。 囚人は、視線を空に向けたまま、ゆっくりと歩き出した。しかし、次の瞬間、ブザーがけたたましく鳴り出した。

「おい、そこでなにをしてるんだ」

彼はやってきた二人の刑務官に捕まってしまった。

薄暗い廊下には、三人分の足音がこだましていた。

「これからどこに連れて行くんです?」

捕まっているのに、囚人の声はやけに冷静だった。

「さあな。見てからのお楽しみだ」

彼の左腕を押さえている若い刑務官は、にししと笑った。

数分後。囚人が連れて行かれた場所は、こじんまりとした部屋だった。真ん中にはキャスター付きの椅子が置かれており、その横にはなにやら大きめの機械が置かれていた。彼の右腕を押さえていた年配の刑務官は、椅子をあごで指すと、こう言った。

「39番、まずはそこに座りなさい」

39番と呼ばれた囚人は、顔色一つ変えずにそこに座った。それを見ていた二人の刑務官にはその様子が不気味に見えた。まるで、感情というものを失っているようなそんな感じだ。恐怖を抑えながら、若い方が機械に繋がっているヘッドギアを39番の頭にかける。

「一体何をやるんです?」

39番のふたたびの質問に、若い方はまたかと顔を顰めた。

「何って、お前の頭の中を見るんだよ」

そう言うと、若い方は機械のスイッチを押した。

重苦しい沈黙が横たわる中、若い刑務官は、39番にこう質問した。

「39番、お前さっき脱獄しようとしたろ?」

「いいえ、空を見ていただけです」

39番は何くわぬ顔でそう答える。

「嘘つけ」

若い方は、後ろにあるモニターを親指で指した。そこには外に出たかったという文字が映し出されている。

「お前の考えは読めてるんだよ」

39番は目を見開いた。

「今君がつけているそのセンサーが、君の脳内を読み取ってくれるんだよ」

そう言ったのは、年配の方だ。彼はさらに続ける。

「39番、本当は脱獄したかったんだろ」

すると、39番は意外な返事をしてよこした。

「はい」 ようやく吐いたか。二人は顔を合わせてニヤリとした。少なくとも、この十五秒後までは。

「なっ……?」

若い刑務官は、モニターを見るなり、うめき声を出した。それには、こう映し出されている。

<本当は空が見たかった>

「えー、君。まさかふざけてるんじゃないだろうね」

ベテランは困ったように笑いながら、そう39番に聞いた。しかし、相手は口を開かない。

「おい、本当のところはどっちなんだ」 若い方はイライラしながらそう言った。それでも39番は何も言わない。相変わらず仏頂面のままだ。

「いい加減答えろよ」 若い方がそう言うと、39番はモニターを無言で指さした。

「早く解放してくれ……?」

ベテランがそう言うと、39番はついに重い口を開いた。

「疲れた。早く自分の独房で休みたい」

「は?」

若い方は、呆然と見つめていた。考えの読めない相手の顔を。