CityScape

映画レビューとか日常とか

今日のショートショート #6 「VR親フラ」

ここは、どこかの戦場。深い森の中で、兵士たちが三、四人ほど行軍している。ぼくは、茂みの中で、攻撃のチャンスを伺っていた。

「こちらワン、ターゲットを発見した」

息をひそめながら、ぼくは無線で仲間に連絡する。

「OK」

「今から攻撃を開始する」

ぼくはそう言うと、勢いよく敵兵の前に躍り出た。

「動くな!」

そのまま、銃を乱射。敵は散り散りになって逃げ出す。

「全員突撃!」

ぼくの号令で別の茂みに潜んでいた仲間たちが銃をぶっ放す。弾丸の嵐の中、ぼくたちは、相手を追いかけ始めた。

「出てこい。隠れても無駄だ」

ぼくがそう煽ると、相手が物陰から撃ってくる。

「ふふ……」

ぼくは、この瞬間がたまらなく好きだった。気を抜けばすぐにやられるスリル感。その中で、ぼくは自慢のリボルバーを華麗に構える。発砲の瞬間のバン、というまさに快感の極地だった。 ああ、なんてこんなに気持ちいいのだろう。 ぼくが快感に身を委ねていると、耳元で声がした。

「ひろしちゃん、ご飯よ」

「うわぁっ!?」

ぼくは派手に転んでしまった。

***

「ちょっと!ノックぐらいしてよ」

ひろしは、床に思いっきりぶつけてしまった尻をさすりながら立ち上がった。その傍らには、VRゲームで使う用のウォーキングコントローラーがあった。母親はドアの前で、ため息混じりにこう言った。

「こんな時間になんかうるさいと思ったら、ゲームしてたのね」

ひろしは時計を見た。午後七時半。あっという間だ。

「それが何?」

「ゲームのやりすぎは体に毒よ」

「うるさいな」

ひろしは鼻を鳴らした。

「みんな心配してるのよ。勉強せずに遅くまでどんぱちしてたって」

母はそう言うと、部屋から出て行こうとした。これで続きができる。ひろしがそう思ったのも束の間、母は思いついたように彼に向き直った。

「あっ、そうそう。こないだスーパーで吉田くんのお母さんに会ったの」

吉田くんと言うのは、彼のクラスメイトのことだ。

「それによると、あんた授業中にしょっちゅう居眠りしてるみたいね」

「あいつ……」

ひろしは拳を震わせた。そんな彼を尻目に、母は言う。

「ひろしちゃん、学生の本分はなんだと思う?」

「えっと……」

「勉強よ。ゲームばっかしてると、ろくな目に会うわよ」

「はいはい、わかってるよ」

「こら、はいは一回でいいでしょ」

***

その頃。ゲーム内では、仲間たちがボイスチャットから漏れる親子の会話に苦笑していた。ひろしはまだ知らなかった。この後、仲間達から笑い物にされることを。