CityScape

映画レビューとか日常とか

今日のショートショート #12 「別荘へようこそ」

ある日曜日。ある一人の男が友人の別荘に招かれた。

「へぇ、すごいな」

男は、目の前に現れた光景を見て、ため息を漏らした。彼の視線の先には、神殿のような壮麗な空間が広がっていた。

「いいだろ」

そう鼻の穴を膨らませる友人と共に玄関をくぐると、貴族の屋敷のような広々としたホールが二人を出迎えた。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

しかも、可愛いメイドさんのおまけ付きだ。

「ん、ただいま」 友人はそうメイドさんに手を振ると、そのまま奥に進んでいった。それについていくと、今度はリビングルームが現れた。部屋の中は広々としていて、映画のスクリーン並の大画面テレビと、最新のゲーム機やフィギュアが所狭しと置かれていた。中でも目を引くのが等身大サイズの美少女フィギュアだった。それを男がまじまじと見ていると、友人がこう言った。

「ちょっと触ってみて」

「うん」

言われるがままに、フィギュアの腕を触ると、それの顔が男の方を向いた。その表情は、明らかに恥ずかしそうだった。

「ここは天国だよ」

友人はそう言うと、別のフィギュアの女の子に膝枕をさせた。

「ふふ……買ってよかったわあ」

柔らかそうな太ももに顔を埋めながら、そう言ったその時、後ろからこんな声がした。

「買ってよかった……ですって?」

「ふぇ?」友人はかけていたVRゴーグルを外した。男もそれに続く。そうすると、目の前に友人の妻が仏頂面で立っていた。

「また、勝手になんか買ったようね」

「いやいや、そんなやましいものじゃないよ」

もちろん嘘だ。男は知っていた。これは友人がオタク趣味を楽しむために十万で買ったバーチャル空間の中の別荘なのだ。

「ちょっと見せて」

しかし、妻の前では、そんな弁解も通じなかった。彼女は、男のゴーグルをぶんどった。

「ちょ……」

妻は、ゴーグルの中の光景を見た。一瞬で真顔になった。

「あ……」

彼女はゴーグルを外すと、冷たい瞳でこう言い放った。

「サイテーね」