ある日曜日。ある一人の男が友人の別荘に招かれた。
「へぇ、すごいな」
男は、目の前に現れた光景を見て、ため息を漏らした。彼の視線の先には、神殿のような壮麗な空間が広がっていた。
「いいだろ」
そう鼻の穴を膨らませる友人と共に玄関をくぐると、貴族の屋敷のような広々としたホールが二人を出迎えた。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
しかも、可愛いメイドさんのおまけ付きだ。
「ん、ただいま」 友人はそうメイドさんに手を振ると、そのまま奥に進んでいった。それについていくと、今度はリビングルームが現れた。部屋の中は広々としていて、映画のスクリーン並の大画面テレビと、最新のゲーム機やフィギュアが所狭しと置かれていた。中でも目を引くのが等身大サイズの美少女フィギュアだった。それを男がまじまじと見ていると、友人がこう言った。
「ちょっと触ってみて」
「うん」
言われるがままに、フィギュアの腕を触ると、それの顔が男の方を向いた。その表情は、明らかに恥ずかしそうだった。
「ここは天国だよ」
友人はそう言うと、別のフィギュアの女の子に膝枕をさせた。
「ふふ……買ってよかったわあ」
柔らかそうな太ももに顔を埋めながら、そう言ったその時、後ろからこんな声がした。
「買ってよかった……ですって?」
「ふぇ?」友人はかけていたVRゴーグルを外した。男もそれに続く。そうすると、目の前に友人の妻が仏頂面で立っていた。
「また、勝手になんか買ったようね」
「いやいや、そんなやましいものじゃないよ」
もちろん嘘だ。男は知っていた。これは友人がオタク趣味を楽しむために十万で買ったバーチャル空間の中の別荘なのだ。
「ちょっと見せて」
しかし、妻の前では、そんな弁解も通じなかった。彼女は、男のゴーグルをぶんどった。
「ちょ……」
妻は、ゴーグルの中の光景を見た。一瞬で真顔になった。
「あ……」
彼女はゴーグルを外すと、冷たい瞳でこう言い放った。
「サイテーね」